ね、20代の絵って感じがするでしょう
先輩から急に連絡をもらって、ご飯を食べたのだけど。相手がわたしだからって謎のカオスなギャラリー喫茶を選んだのだという。奇をてらったとこじゃないと、なんてことは思ってないけれど人からそんなふうに見えているのかなと思っちゃった。普通の人間です。でもその喫茶店が最高に面白かった。
絵の一つ一つも、店内にさりげなくいる謎の生物も、そしてその謎の生物がコーヒーカップにもいたことも、この喫茶店の名が出てくる詩も。
興味深くきょろきょろしていると、さっきまでそっけなかったご主人が近寄ってきて、ひとつひとつ丁寧に、そして楽しそうに、教えてくれた。
内装は、30年前に20代だった女性が手がけたらしいのだけど、30年たったいま、塗り替えているという。どことなく宗教チックでアングラな香りがする絵をみてうきうきしているわたしにご主人は言った。「ね、20代の絵って感じがするでしょう」納得した。納得はしたけれど、やっぱり塗り替えられちゃうのには納得できない。いいじゃないか、そのままで。でも、内装の半分が塗り替えられた段階の今、すごく、すごく綺麗だった。若かりし頃の彼女と今の彼女がぶつかる感じ。それでいて、同じ彼女なんだって、続いているんだってにおう感じ。すごく綺麗だった。
そんな喫茶店に連れて行ってもらえたのが嬉しい。おもてなしだって思った。そんなふうに人を想える姿が素敵だなって思った。はやく大人になりたい。いろんな嫉妬とかいろんな焦燥とか抜きにして、まっさらに人と関わりたい。
わたしは何もできないのだと思っていた。でも、思っている以上にそうではないらしい。思っている以上に、何かを与えているらしい。でもやっぱり、楽しそうだねって言われるのは少しさみしい。前までは楽しそうにみえるなんて嬉しいって思っていたけれど、楽しさをいくら真剣に伝えても、身をもってその人が同じ楽しさを感じられるかっていったら、なかなかそうはいかないもんだね。
個人経営のお店って、お店にあるものすべてにその人の感性や文脈が現れるので面白い。面白くうつるものが多すぎて少々うるさかったかもしれないけれど、一生懸命伝えるひとつひとつに笑ってくれる周りの人たちを大切にしたい。真面目なこと言ってみた。こんなことを書いていたら平気で四つ先の駅まで来てしまった。折り返そう。
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