「あの頃のふたりは時が経っても消えやしないよね」
去る夏の、ある夜。なにかが変わった気がした。なにかはわからないけれど、いまの足取りは軽いし、わたしはわたしを思い出した。たしかにそこになにかがあって、それが、なにかを変えてしまったらしい。
そんな想いを消費したくなくて、ツイートしてみて、消した。ずっと頭のなかで飴玉みたいになめ回しては大事に紙に包み、また取り出して、というのを繰り返していたらもう4日も経っていた。
飲みそびれていた発泡酒には水滴がたくさんついていて、なみうちぎわになみはなく、聴こえるのはきのこ帝国とカメラの音。水面にオレンジ色の光が揺れていて、煙草のけむりがただよっていた、それだけの瞬間が、わたしの心をとらえてはなさない。写真の中のわたしはいったいどんな顔をしているんだろう。
「きのこ帝国の好きなところは報われるとか報われないとかじゃなくて、“いつもそばにいる”って歌い続けているところなんだ」
あたりがうっすら明るくなるまでとめどない話をして、手を振ってから互いに連絡をとっていない。それも含めて心に残っていく。
「あの頃のふたりは時が経っても消えやしないよね」
きのこ帝国「金木犀の夜」
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