未来はいつだってちりぢりの上に成り立っている

朝起きて、ココアをつくった。何度も読み返した手紙をまた何度も読み返して、パンパンに腫れている目がまたさらに腫れた。頭の中ではいつまでたっても彷徨うばかりなので、日記でも書こうと思って。パソコンを開いたのだけど、何も言葉が浮かんでこない。浮かんでくるのは言葉の断片と、ゆらゆら光るランプの灯火、涙がとまらなくてうつむいたまま食べたガトーショコラ。ガトーショコラを食べ終えたら、灯火が急に小さくなって、とうとう消えたこと。帰りのバスの中で無理になって、歩いて帰った。誰も通らない歩道橋の上で何度も手紙を読んで、声を上げて泣いた。頭をよぎったのは、20歳最後の夜に渋谷の歩道橋の上で「東京のこと、東京で出会った人や物やことが超好きだ」って思ったこと。あの日に食べた洋食屋さんのハンバーグ。あたしはよくもわるくもぜんぶ覚えている。そのときの状況も、何を思ったかも、誰がどんな顔をしてどんな言葉をかけてくれたかも。部屋がしんとしている。首都高の音はもう聞こえない。パソコンの画面の右端には相変わらずひび割れがあって、あたしだけの部屋だ!って過ごしていたのは気丈に振る舞っていただけなのかもしれないとさえ思えてくる。あたしはあたしの思い込みで生きている。誰かになんて左右されてたまるかと思いながら、強引に引っ張ってくれたらいいのにと思っている。いぬか星になりたい。ちりぢりのかけらのことが大好きなのに、そんなものがあるからいけないのだと思い始める。ちりぢりはどうなってもやっぱりちりぢりのままなんだし、ちりぢりが未来になることはないのにね。まあ、未来はいつだってちりぢりの上に成り立っているんだけど。握りしめていたはずの答えを探している自分がいる。まばたきすると目がひりひりする。もう涙は出てこない。ふと窓を見て、今日がまだ曇りでよかったと思ってびっくりした。晴れの朝にうれしくなったり、曇りの朝にほっとしたりする、自分の素直な気持ちに気付けるようになってよかった。部屋にいてもしょうがないので、今日はこんなパンパンのまぶたを笑い飛ばしてもらいに行こうと思う。

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