たくさん歩き回ってたどり着くのは、たいてい出発地点なのだ
積読ばかりの本棚にふと目をやって、なんとなく前に作ったZINEを手に取った。パラパラとめくって自分が寄稿した文章をひさしぶりに読み返すと、どん底のような気持ちで書き殴った想いが鮮明に思い出された。その左下のプロフィールの欄にちいさく書かれた「自分を取り戻すように文章を書いています」って言葉。原稿から逃げたときのことを思い出す。いい原稿って何?どうしてもまとまらない。どうやったら誰かに届くの? そんな言い訳ばかりして、あたしはごまかしたのだ、自分の書くのが大好きな気持ちを。あんたはどうしようもなく遠回りばかりで、笑ってしまうね。たくさん歩き回ってたどり着くのは、たいてい出発地点なのだ。
ずっと考えていた。「仕事の勉強はいつやっているんですか?」という問い掛けへの回答を。嫌われてしまうかもしれないけれど、正直に言うといま何も上手くなりたいこともなければ、勉強したいこともないのだ。それは、これまでの仕事への向き合い方とまったく違っていて、あたしだって困惑している。こんなはずじゃなかった!どこにいっても面白いことを見つけられると思っていた。あたしはあたしを都合よく買い被りすぎていたのかもしれない。なんにでも学べることはあるのだろうけれど、なんでも面白がれるなんてことはなかった。あたしががんばれていたのはなんでだったのか。あんなに泣いたり笑ったりしながら向き合えていたのはなんでだったのか。目の前の相手の核心に触れて鳥肌が立つことはしょっちゅうだった。それを言葉で表現することにも、ちゃんと誰かに届くものにすることにもこだわっていた。純粋に、そんな仕事への向き合い方が好きだったし、淡々と日々や目の前の仕事をやりすごすことがなによりも嫌いな自分に合っていた。あとは、仕事とは別にもう一つの場があったことも大きな理由だと思うし、「この人といつか絶対に仕事がしたい」という思いを持っていたのも大きかった。心をぐっと込めて書かれた文章のことも、そんな文章を書く人のことも尊敬していたのだ。うるせーな。いくつになっても、何か憚るようなことがあろうとも、いろんなことぬきにして、あたしは、あたしは。どうしたいのかって聞いてんの!
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