「誰が現れたってまっすぐに見つめよう」
夕方、外に出てみたら風が気持ち良くて、歩きながら見つけたベンチで本を読んでいた。いつのまにか辺りが暗くなっていて、セミじゃなくスズムシが鳴き始めていて、夏ももう終わりだねって。
本を閉じて、小山田壮平のソロではじめての新譜を聴いた。旅するような、さすらうような、風みたいな言葉と音楽。一人になったことで、いろんなものから解放されて、まっさらな身一つでうたっていて、それにこれまでよりももっと毎日をうたっていて、まっすぐでうれしい。しかも今回は、自分じゃなくて、誰かとか誰かとの間にある何かとか、そんなことをうたっているような気がして、これまでにない開かれた感じというか、風がサーって吹いているようで、それがまた心地いい。見つけたんだね、いま鳴らしたい音を、そしてうたいたいことを。
「なにも言えないし 憂鬱にもなってしまうし」なんていうぐるぐるした気持ちは小山田壮平がずっとうたってきたことだけど、それを今回「考えるだけ時間の無駄にちがいない」ってうたっているのも、ゆっくりなリズムで「いつかは訪れる光もあるから」ってうたっているのも、小山田壮平が漂いながらもたどりついたいまの生き方やものの捉え方なんだろうなって。
歩きながら、うつりゆく景色をみながら、なんどもなんども聴こう。ひとつひとつの言葉がわたしのなかにどんなふうに落ちていくのかがいまから楽しみだ。
小山田壮平「HIGH WAY」
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