それは、井の頭公園からです。

先日、バイト先の子に、おすすめの本を尋ねられた。

正直、そんなのはじめてだったし、ひとに何かをすすめるのはあんまり得意ではない。

一つ一つのものに対して執着も思い入れもすぐに感じてしまうたちだからがゆえに、

どこまで相手が求めているのか、どこまで話せば良いのかわかんないよ〜。

だから、何をすすめればいいのかめちゃめちゃ悩んだ。

どんなのがいいのか、短いものか長いものか、ミステリかSFかサスペンスか日常系か。

とくにこだわりはなく、なんとなく一押しの本を読みたいだけだそうだ。

わたしの本の選択は難航した。

好きな本をすすめればいいじゃないか、そう言われてしまうかもしれないけれど

そうはいかないだろ〜!!!

大好きな作品、太宰の『晩年』すすめるか?!あんまり本を読まないから余計に言葉がまずわからないってぽいっとされてしまうかもしれない!

安部公房の『人間そっくり』や『箱男』は?!きもちわるいやつだなと思われるかもしれない!!好きだ!!

かといって角田光代の『この本が世界に存在することに』をすすめるわけにもいかない!本を貸す相手は男子なのだ!

名前は絶対知っているだろう村上春樹はどうだ?!『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』すごくすきだ!あっだめだ!長すぎる!

じゃあもう、名作で攻めるしかない!ヘミングウェイの『老人と海』はどうだろう!カフカの『変身』もいい!これなら特に変な人だと思われたりとも女子すぎたりとも思われない!でも、逆に急に海外の作家を出されてハードルが高いと感じてしまわないだろうか?!だめだ!とりあえず日本の作家だ!

じゃあ東野圭吾の『手紙』?随分昔に読んだきりで覚えていないのに人に勧められるのか?!だめだ!

そういってわたしが最後に選んだのは伊坂幸太郎の『終末のフール』

なんだか悔しい。すきだけど、そんなに心がざわついたものではない。

知名度があって、読みやすい。こういう理由でわたしはバイト先の子に本をすすめてしまった。もっときっと好きな理由はあったはずなのに。この本について、この本を読み終えた時、なんだかこころの奥があったかくなった、そんなこと、もう忘れかけていて。

本当にこれで良かったんだろうか。

わたし、すごく本のことがすきだけれど、

そもそもなんの本がすきだったんだろう?なんの本がすきなんだろう?

そういう衝動みたいなものを忘れていたような気がして、

昨日、古本屋に駆け込んだ。古本屋といえばすこし聞こえがいいけれど、
ただのブックオフだ。

定期的に来て、見て回って、本の配置を確認する。あるものも、探すものも、みつけるものもあんまり変わらない。

たくさんの本があるはずなのに、目に止まるものは読んだことがあるものばかりで、

なんだか面白くない。

わたしは、そんななか一つの瞬間にでくわす。

古川日出男『サマーバケーション EP』

中学生の頃か、高校に入ってすぐに読んだ気がする。

まだ東京なんかわからない頃。いろんなイメージを膨らませながら読んだなぁ。

知らない土地なのに、とってもリアル。本当に歩いているみたいだったなぁ。

こういう本があることが嬉しい。

結局は本が好きなんだな〜、なんてひとりで笑ってしまった。悩むことなんてねぇ〜。

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