蓋の中で蠢くもの

いろんなことが錯綜しすぎて、それらに翻弄されていたなって気づくことが多い。

本を読んだり映画を見たり、野球を見たり。面白い番組が始まったり。

いろんな昔からの友達、新しい友達に会ったり。

なんだか楽しい一週間だった。

久しぶりに衝動に駆られて本屋さんで本を買った。いつも古本屋でしか本は買えないけど、すぐに欲しい本だけはすぐに本屋に飛び込んで買う。こういう衝動を大事にしてきた。

朝井リョウの『何者』面白かった。引き込まれた。久しぶりに、こんな純粋に物語をエンターテインメントとして楽しんだなっていう感覚があった。そのくらい、上手に、巧妙に構成されていて、続きが読みたくて、朝が待てなくて、一晩で読み明かした。

今まで自分が好きになってきた小説って、どこか主人公に異常なまで情がわいたり、ちょうどいい言い方が思いつかないけど物語自体が究極に主人公贔屓していたりするものがやっぱり多かった気がする。でもこの小説は恐ろしいほど客観的で誰にも寄り添っていないと思った。目線はもちろん主人公目線ではあるんだけど。わたしに当てはまる人がいなかったこともあるだろうけど、すごく低い温度で泥仕合が行われていて、まさにそれが就活そのものでも、この時代の若者そのものでもあったからかな。エンターテインメントだって思った。

「バランス。そんなふうに、これ以上ないくらいに簡潔かつ的確な言葉で蓋をしてしまうのはもったいない。その蓋の中で蠢くものが、隠されてしまうのはもったいない」

140。140字で表現することを迫られる現代だからこそ、選ばれる言葉と選ばれない言葉があって、選ばれなかった言葉にこそ、目を向けるべきだ、想像力を持つべきだ。震えた。ゾッとした。胸が熱くなった。周りの人も、わたしも、どんな言葉をどういうふうに、なんのために、使っているのか。生きるために必要なのは想像力。これは間違いない真理だ。


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