「いろんな人の力を借りてゆこう」
昨日、3階にいたら3階の景色しか見えないなんて言っておきながら、お客さんに退職の挨拶をした帰り道、営業の人と話していたらつい泣いちまった。「やってるときはわかんない」って言いながら、こぼれた涙がマスクに染み込んでいく。
「~さんの二作、経団連に出しますから!」ってお客さんの言葉がうれしくて、「やっぱりすごく良かったもん」って営業の人の言葉がうれしくて、自分がいた場所のことを思う。
これでいいのか? これで本当に届くんだろうか? 何度も何度も悩んで、悩みあぐねて正解がわからなくなった。でも、それも含めてずっと全力だったことはほんとうで、その案件に限らず、きっともっといいやり方なんていくらでもあっただろうし、きっとどれだけ悩んだって正解なんてものはないんだってこと、今ならもっとわかる。
正直、いつだってなあんにもわからなかった。周りの人が「良い」って言っているのがわからなかった。わたしだってもちろん良いと思って出してはいるけど、きっと本当のところで自分に対しても、作るものに対しても自信を持てていなかったからだろうし、もしかしたらいろんな人のことを信用していなかったのかもしれない。だめですねぇ、ひよっこのあたいがピーピー言っちゃってさ。
昼やすみ、偶然すれ違った人とベンチでごはんを食べた。「いつもすっかすかの原稿になってしまう」と言われた。なぜ?と不思議だったけど、その瞬間、遠い昔のことが一気に頭を駆け巡る。初めての取材で、目の前の取材相手に全然踏み込めなくて、何が聞きたいのかわからなくなって、山形から半泣きで帰ってきたこと。言葉をつなげるもそれこそすっかすかで、大赤字をくらったこと。22時過ぎに戻された大赤字を前に泣きながら営業の人と直属の先輩に説明して、一緒に原稿を修正してもらったこと。
そんなこともあったなー、一生懸命聞くのも、書くのも、とっても好きだったなーって思ってお昼の帰り道には「あー原稿書きてー!」な~んて。
「いろんな人の力を借りてゆこう」
救われたあの日から、いろんな人からたくさんのものを受け取っている。手が空いたからかな、心が解放されたからかな。たくさんの力に支えられてここにいる。
星野源「ブランコ」
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