どんな夜からも連れ出しちゃうんだ
部屋で一人きり、明かりを消してイヤホンをつけて、膝を抱えて見始めたライブ。音と光と映像に一気に引き込まれて、部屋と部屋の境目がなくなっていくみたい。すべての意識を画面の中の空間に集中させていた。ぜんぶの夜に響き渡った気がした一音、一言。すると一瞬にして光のほうに連れ出されていて、気づくと心も軽くなっていて、胸に手をおかなくてもドキドキしているのがわかる。息を飲むと涙が出た。どんな夜からも連れ出しちゃうんだ、みんなのこと。こんなに離れているのに、リアルタイムでもないのに、すぐ目の前で手を差し出してくれているようで、こんなに簡単に、こんなに美しく、こんなに心強く連れ出しちゃうんだって。“夜を乗りこなす”ってこういうことなんだって。
彼らの物語は知らないことばかりだけど、ファーストから順にぜんぶ、曲だけを何度も繰り返し聴いて、いろんなことを思ってやっとライブにたどり着いたもんだから、一曲一曲が彼らにとってどんな曲なのか、彼らにとってダンス・ミュージックってなんなのか。やりたいこととか、ぎゅっと握りしめている思いとか。ずどーんと伝わってくるものがたしかにあって、うわー、うわーっていつのまにかめちゃくちゃ笑顔で身体を揺らしていて、なりふりかまわず大好きになっちゃった。
出会えるタイミングは何度もあった。それでも出会ってこなかったのにはきっと意味があるんじゃないかって、ちょっと言い過ぎでしょうか? 何に出会うかはこころの風向き次第で、そのものの良さだけで出会えるほどまっすぐではないのでしょうがない。だからこそ、ちゃんと出会えた瞬間のことが尊いし、ずっとその瞬間のドキドキが残り続けるのだと思う。
まだまだこの音の中にいたくって、もう少し、もう少しだけともう一度見始めたらほんとうに眠れなくなってしまった。夜を歌うということは、朝を歌うということ。暗闇を歌うということは、光を歌うということ。どうせすぐまぶしい朝が来るんだから、いまはこのままでいさせてよ。
サカナクション「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」
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