「空がこんなに青すぎると すべてを捨ててしまいたくなる」

なにが苦しいって手応えがないこと。出張帰りの新幹線でふとそう思ったときに流れ出す「16」。みんなが笑っていてよかった、無事に終わってよかった、ただそれだけで、わたしにはなにも残らない。なにも苦しまず、なにも葛藤しなくていい。わたしのこころは動かなくとも、いろんなことを調整すればちゃんと帳尻が合っていく。そんなふうにして得た疲れはただの疲れで、抜け殻のような気持ちになる。
いまは修行、いまは修行。そう唱えながら、わたしはどこまでいく? ひさしぶりの出張で大きな産業機械や組み立てられている現場を見ながらいろんなことを思い出した。行きの新幹線でノートにたくさんメモを取りながら勉強して取材先に向かっていたこと。現場で出会ういろんなことに素直に感動して興奮していたこと。目の前の人がぽつりぽつり語ってくれる言葉の数々。その言葉のしっぽを掴もうと、何度も投げかけた質問。出てきた言葉に鳥肌が立つ瞬間。来た時よりもずっと、その人たちのことをわかっている実感がある帰り道。
東京駅に着いて、改札を出る。何度もあった着信に折り返して謝っては途方に暮れる。ああと思いながら電車に揺られていたらつぶっている目から涙が出てきた。帰ってきてパソコンを開いて急いで年末調整をやる。お金のことを考える。上がってきたデザインがデザインじゃなくてむなしくなる。抗おうとして突き放される。労力と、お金。みんな、ただ自分にできる限りの力でそれに見合った対価を得ているだけなのに、それがぜんぶ茶番に思える。
つかれた。ひとつひとつに気持ちが宿らない。わかっているという実感が持てない。それでもなお止められない。走りはじめたら立ち止まることはできない。いろんなことをあきらめてハンドリングしていくことばかり優先してしまう。圧迫していく。時間が、人生が、こころが。いったいどこへ向かっているのか。いったいどこへ向かっていきたかったのか。あたしは、あたしは。今日はただの調子が悪い日。つかれと落ち込みと、怒り。ひさしぶりに開いたメモが、うれしくない言葉で埋め尽くされていく。もっと書きたい瞬間のことがたくさんあるのに。でもとりあえずはどうにかこの気持ちを自分の外に放り出しただけでもよかった。こんな言葉の羅列でも、きっといつかの自分の足元を照らすと思うから。さっさと立ち上がって、いまは明日のために湯船でも張ろうね。


andymori「16」

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