「本当にあっちに行きたいんだったら行け。行きたくないなら行くな」

ドキドキをあつめる週間。照りつける太陽の下を歩いてわざわざ最寄りじゃない駅から電車に乗って銀座へ。立ち寄ったルミネがキラキラして見える。立ち話でなんとなく悩みを相談したらぴったりをおすすめしてくれて最高の気分。目的のG8の「菊地敦己 2020」とgggの「TDC 2020」へ向かう。中高生の頃からフライヤーを大量に集めていて、上京してすぐその中からお気に入りを部屋の壁にバッチバチに貼りまくっていたのを思い出した。好きがあふれている。なぜ好きか? なににこんなにドキドキしてしまうのか? まずは自分を知らなくちゃいけない。道筋はそれから。

ウーンと思いながらアイスカフェラテを飲む。長編小説も下巻の中盤に差し掛かる。そこからはもうページをめくる手が止まらなくて、気づけば電車で帰宅し、いつのまにか深夜になっていた。

“みんなが一生懸命にやっているときに休むとか、みんなが血を流して戦っているときに自分一人で安全なところに逃げるとか、そういうことは変でも何でもないんだよ。そうしたいんだったら、別にそうしてもいいんだよ。” “お前が、やりたいことをやるんだ。マガジンを交換しに、本当にあっちに行きたいんだったら行け。行きたくないなら行くな。”

うつむいて座り込んだタテノが、最後に笑顔をつくろうとしたカネシロが、「それは、お前の自由だ」と言うイシハラが、登場した全員が、確かにここにいて、一晩明けた今もまだドキドキしている。まるでその場にいたかのように、ありありと状況を思い浮かべられる。でもSNSを開くとここじゃないどこかで今まさに発生している大規模爆発の様子がたくさん目に飛び込んできて、こわくなって閉じた。あとがきには「独自の生き残り哲学」の文字。わたしは、わたしは、ってぼそぼそ言いながら、今日もどこかに向かって家を出る。


村上龍「半島を出よ」

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