「簡単なことを知っているから むずかしい」
とまっていたいろんなことがくるくると回り始めてすこし足がすくんでいる。あれよあれよと気持ちもくるくるとめぐりめぐっては毎回おんなじところにたどり着いて、その度に「大丈夫」って自分に言い聞かせている。一見無意味かもしれないけれど、きっとなんどもなんどもやって、なんどもなんどもおなじところにたどり着かないといけないんだろうなって思う。
秋晴れの空にうれしくなりながら坂を下ってスーパーに行くと、いろんな記憶がどどどどと押し寄せてきて泣きそうになってしまった。前にも、当時住んでいた街のスーパーのお肉売り場で泣いてしまったことがあった。スーパーは暮らしと密接すぎるからあやういんだよなあ。そんな帰り道に流れ始めたカネコアヤノ。初めてカネコアヤノを聴いたときのこと、見たときのこと、赤いワンピースが鮮明に思い出されてぐっときてしまった。
高校に入っていろんな音楽を聴くようになってやっと10年とかだけど、どんどん東京で出会った音楽の割合が増えていくんだなあと思っている。誰がどんな顔をして教えてくれたのかが一つ一つ思い出せてしまうことを、うらめしく思う反面、やっと、ほんとうにやあっと、すべてがいとおしいなと思えるようになってきた。カネコアヤノに出会っていなかったら、BiSが復活しなかったら、天才バンドのライヴに行っていなかったら。何が欠けても、いまのあたしではないし、これまでの日記もうまれていない。そしたらきっと出会えなかった人もいるし、逆に出会っていた人もいたんだろうな。いまのあたしがここにあるのは、すべてがあったからなんだなって、やっと思えるようになった。
おうおう、ちゃんと進んでいるぜ! そんな気持ちで手を動かしていたら、とろとろのシチューが出来上がった。部屋中にあったかい湯気が立ち込めるのを眺めながら、ちゃんとごはんをつくって、ちゃんとやっていこうって思っているところ。
カネコアヤノ「こころとことば」
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